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 早朝の真っ白な陽光が、彼の姿を包んでいく。
 眩しそうに細められた真っ青な眼が、わたしを見つめた。
「この里の朝は、どんな季節でも綺麗だね」
「そうよ。ここは神秘の森にある、常盤の里。常人が踏み入れることの許されない聖域」
「夢から醒めたおれは、もうここに来ることができないね」
(ウタ)の見舞いに来るというのならいいと思うわ。でもどうせ、あなたはもう来ないのでしょうね」
「もうすぐ唄は悪夢を視なくなる。怖い夢に怯えて現実に依存して生きなくて済む」
 彼と真逆である唄の症状も、次第に好くなっている。
 彼の言うとおり、じきに夢と現の平衡を取り戻すことになるだろう。
 そして彼と同じようにこの里を出ていくのだ。
「あなたの方が重い症状だったのに、唄より先に完治するなんてね」
「本当にありがとう、(スウ)
「・・・・・・わたしは夢の世界の理をあなたに教えただけ。現実世界まで歩いて来たのはあなたの力よ。現まで光を掲げて導いてくれたひとが、いるようだけれど」
 彼は淡く微笑んだ。
 これから感情豊かになっていくであろう端正な顔立ち。
 初めて会った時よりも精悍になった。
「そうだね。あのひとの、」
 昔から夢の世界で過ごすことの方が多く、現実の世界にほとんど思い出を持たなかった彼の心に、強烈に焼き付いた記憶。短くも鮮やかで温かい、現への灯し火。
 治療の最中、わたしは少しだけ見た。
 黒みがかった瞳の、異国的な娘。その涙と約束を。
「独りで行くの?」
「独りで行きたい場所がある」
 流浪の民たちは、彼ら姉弟とその世話役をこの里に残して、彼らにとって新たな地であるこの東大陸を流浪している。すぐに合流しないのだとは薄々と気付いていた。
「会いたいひとがいるのね」
「――約束をしたから。おれは浮から聞いただけだけど。枢も聞いたっけ」

『言ってたよ。もしおまえがお嬢さんと互いに触れあえる距離で会いたいと願うなら、おまえのその足でこの国まで来いって。それまで楽しみに待ってるから、って』

「だから、行く」
「正直に言って寂しいけれど止められないのね。あなたはもう、ここに居るべきひとではない」
「一年間本当にありがとう。この常盤の里での思い出を忘れない」
 そんなの慰めにならないわ。
 優しいだけだもの。
「枢。さよなら」
「さようなら、朱鳥」
 美しい火の鳥。
 行ってらっしゃい、あなたを燃やす暖かな炎のもとへ。




わたしは只想う

 



 



 



 

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